欧米の童話などで狼は悪役として登場することが多いですが、これも狼を敵視してきた歴史の影響でしょうか。 / オオカミ少年の話の背景にも、何か事件があったのでしょうか。 / イソップの寓話なども、動物と人間の歴史を反映した記録といえるのでしょうか。

もちろん、グリムやシャルル・ペローの童話に登場する狼は、承前の歴史を踏まえたものであり、当時の狼観を探るうえでの重要な史料でもあります。イソップの「狼少年(嘘をつく子供)」については、アイソーポス作といわれる寓話を最初に集成した前3世紀のデメトリオス版に含まれていたかどうか、同書が散失したいまとなっては確認できません。しかし、『ソクラテスの思い出』に言及される「羊と犬」には、羊を襲う狼の存在が描かれているので、ギリシア世界においても牧畜の脅威としての狼という認識はあったわけです。イソップ寓話は、その後、時代による編集を受けて現在に至っていますが、その変遷を詳細に辿れば、狼観の歴史に寄与しうる史料となるでしょう。