日本では、牧畜という形でなくても労働用の牛や馬がいたはずです。彼らへの狼の害はなかったのでしょうか。あったとすれば、農耕に害をなすとのイメージも生じたのでは?

講義でもお話しますが、通常の状態であれば、狼が里へ降りてきて人間や家畜を襲うことはほとんどありません。しかし近世、山林の荒廃によって餌場が失われると、両者の争いが激化してゆきます。もちろん、牛馬が被害に遭うこともあったでしょう。結果、近世から近代にかけて、日本でも狼を掃討する命令が出され、毒薬なども使われてゆき絶滅に至ります。