なぜ狼に対しては、熊のような送り儀礼が行われなかったのでしょう。
熊と異なるのは、熊が食用や胆汁をとる獲物であったのに対し、狼は食用や薬用として一般的に「消費」されていなかったことです。ただし北海道では、送り儀礼に使用されたとも思われるエゾオオカミの頭蓋骨が、新ひだか町指定有形文化財として保管されています。ロシアの狩猟採集民にも同様の儀礼があったようです。
http://www1.ocn.ne.jp/~sibchari/heritage/heritage.htm#ezoohkami
日本でも近代までは犬を食べていますので、古代からまったく狼を食べなかったとはいいきれません。狼が捕らえた鹿や兎などを人間が横取りすることがあるので、その意味で「肉のもたらし手」という認識も生じていたでしょう。熊より強いものではないでしょうが、やはり肉をもたらす動物の主として、送り儀礼の対象とする地域もあったようです。