神身離脱の言説は、どのように中国から伝わって、どのように日本独自の考えがミックスされたのでしょうか?

伝来は書物によりますが、講義でも扱った『高僧伝』の類や、それを引用した『法苑珠林』などの類書の影響が大きかったと思われます。8世紀、律令国家のもとで仏教の輸入が急速に進みますが、国家の許可を得て得度した僧侶のなかには、月の半分を都にて教学研究や法会勤修に努め、もう半分を山林修行(主に瞑想・禅行)に費やす僧侶たちが現れました。初期の神身離脱は彼らのなかから語られ始めるのですが、その修行のテキストとして用いられたのが『高僧伝』の類だったようなのです。彼らはまだみぬ中国の先人たちの生涯を範型に自らの生き方を組み立て、神との関係、仏教への抱摂の仕方などについて学び、模倣したものと考えられます。日本的な変化も、その際に要素の取捨選択が行われ、結果として現れたものでしょう。