シャーマンとなる過程が成巫譚というのは分かりますが、どちらかというとなってからの実績などの方がまとめられていてもよさそうですが…。

民族社会におけるシャーマンは、基本的には「書かれたもの」としての記録を残しません。講義でも述べましたが、成巫譚も、研究者の聞き取り作業によって初めて成立したジャンルなのです。よって、シャーマンの一代記も残っていません。しかし、彼らが王や英雄として権力を持った時代には、その半生が神話や伝説となって伝えられたことはありえます。成巫譚的構造を持つ神話の一例として紹介したオオクニヌシ神話など、出雲国造が巫師王となるプロセスを象徴的に表したものではないかとの指摘もあります。ヨーロッパの各時代に残る奇跡譚(キリスト目撃譚)、聖女伝なども、成巫譚の一種として読むことが可能です。