長屋王は仏教を崇敬していたのに、なぜ『霊異記』では仏敵のように扱われているのか、よく理解できませんでした。

これについては、よく分からないのが現状です。しかし、『霊異記』の編纂者である景戒は、長屋王首班体制に弾圧された行基の熱烈な信奉者でした。『霊異記』に採録された個人に関わる説話のうち、最も多いのが行基関連です。また、行基の弟子で、大仏開眼会においてその代理を務めた景静という僧侶がいるのですが、景戒はその弟子、もしくは門流に属するものではないかとの説もあります(同じ門流の僧は、法名に共通の文字を冠することが多いのです。名字と同じような用い方です)。よって、景戒は長屋王のことを痛烈に批判したのかも分かりません。