姓は何を意味するものなのでしょうか。

「姓」には、真人、朝臣宿禰、忌寸、臣、連、造…などがありますが、これは氏族と王権との関係、奉仕の来歴を示す称号です。その姓自体に、氏族の基本的な属性、いかなる職掌によって王権に供奉してきたかなどが分かるようになっています。つまり、ウヂナは同じでも姓が違うと、全く異質の氏族である場合もあるわけで、注意が必要です。しかし、諸々の政治的事情によって、そうした「歴史」は容易に改変されてしまいます。例えば、古代最大の内乱といわれる壬申の乱においては、伝統的畿内豪族が没落し新興の東国豪族が台頭してきたため、氏姓に混乱が生じました。『古事記』の序文によれば、天武天皇はそうした情況を是正するため、国史の編纂事業を開始したということになっています。平安期の氏姓の台帳たる『新撰姓氏録』の編纂にも同様の動機が存在しますが、個々の氏族伝承を確認してみると、どうもこうした書物の編纂を契機に神話の再編成が行われている痕跡もあります(秦氏など、『書紀』では半島からの渡来人弓月君の子孫に過ぎなかったものが、『姓氏録』では秦始皇帝の後胤を自称するようになります)。古代人にとって「歴史」とは何だったのか、深く考察するための材料にもなるものです。