狩猟時の感情の変化を分析するのは面白いと思いました。感情というのは、史料からでも研究できるのでしょうか?

80年代以降の日本歴史学に極めて大きな影響を与えたフランスのアナール学派では、心性史・感性史の分野が大きく展開し、人間の感情も重要な対象となってきました。例えば、人間はいかなる対象に恐怖を覚えてきたのか、またその表現はどのようなものであったのか。恐怖の認識や発現の仕方は、古代から現代に至るまでに様々な変化がある、つまりそこには歴史があるのです。感性の歴史家と呼ばれるアラン・コルバンの一連の著作や、アンヌ・ビュフォーの『涙の歴史』などは、日本史の史料を読むうえでも非常に参考になるでしょう。