高校のときに読んだ歴史書に、「藤原不比等は日本の文化的水準を中国に近づけるべく元号を用いた」と書かれていました。この指摘は正しいのでしょうか。

元号とは、その王なり王朝なりが、空間だけではなく時間をも支配していることを示す仕組みです。ゆえに、同一天下のなかでは唯一、もしくは優勢な王朝しか元号を使用することはできませんでした。日本の場合は本来なら中国王朝の元号を使用していてもよさそうですが、地理的関係から直接の圧力を受けなかったため、独自の元号を使用するようになりました。発案者が誰かはともかく、藤原不比等が同政策の推進者であったことは確かで、律令と都城で空間を支配し、元号で時間をも支配する天皇の存在を、大宝の遣唐使を通じて唐国へ通知しようとしたものでしょう。そこには、中国王朝に比肩する国家を作ろうとする意図がみえますが、逆に中国王朝には、無礼な国家、野蛮な国家との印象を与えた可能性もあります。