仏教が他の宗教に比して圧倒的に経典の数が多いのはなぜでしょうか。 / 仏教の経典には建築学や論理学について書かれたものもあるそうですが、どのようにしてそれだけ様々な学問知識が集まったのですか?

聖典の編纂のあり方はキリスト教の場合とも似ていますが、まず釈迦が語った言葉はその時点では記述されず、弟子集団のなかで伝聞の形で受け継がれていました。しかし、十大弟子の1人とされる摩訶迦葉の呼びかけによって第一次の編集会議=第一結集が行われ、仏典の核となる部分が形成されます。その時点ですでに多くの異伝の可能性が胚胎していたと思いますが、教団が拡大して釈迦の教えに対する幾つもの異なる解釈が生まれ、しかも基本的には集団内での口伝により教えが受け継がれていたために、そのバリエーションは増加と拡大の一途を辿ってゆくようになりました。さらに、仏教自体が教線を拡大し、インドから西域、中国と伝播してゆくようになると、それぞれの地域で翻訳された経典も誕生し、さまざまな異訳や、インド的な教えを自民族・自文化に適合するよう理解するための論も創られてゆきます。それらが、厖大な量の仏典を生み出す基本的な動きになっていったのでしょう。また、これは仏教に限らないことですが、その核に宇宙のあり方、人間のあり方への探究のベクトルを秘めた宗教においては、そうした問いを解明するために最新の考え方、知識や技術が援用され、また新しい考え方も生み出されてゆきます。仏教が一大学問大系として成立してゆくそもそもの起点も、恐らくはそこにあったものと考えられます。