『日本書紀』のような書物は企画者本人が書いたのですか?下級官人の叙述した可能性はないのですか?

国史の編纂は、通常は律令制官司の図書寮などが担っていたほか、臨時に撰国史所などの専当官司が設置され統括する場合もありました。それらは四等官制を基本に官僚を従えていますので、いわゆるトップの名の知られた人々だけが記述をしていたわけではないだろうと思います。道慈についても、実際の叙述者としてではなく、仏教関連記事の内容や書き方、どのような文献を参照すべきかなど、アドバイザーのような位置づけで関与した可能性があります。あまり限られた人たちばかりを歴史の表舞台に立たせるのは英雄史観ですので、私は道慈の関与についても限定的に考えていますし、『書紀』の文章からその直接的記述者を特定するのは無理だろうと思っています。