柳の下に道祖神の陰石があることには、何か意味があるのでしょうか。

これは解釈が難しく、また面白い場面です。陰・陽の石からなる道祖神が、それぞれ尼公と翁の傍らに配され、性の問題を暗示していることは間違いないでしょう。それと柳との関係ですが、祠があること、老木であること、立っている場所が衢(交差点。古代の代表的境界のひとつ)であることから考えて、これにも何らかの信仰が存在したものと思われます。柳は川の付近に生育することが多く、また生命力の強い樹木なので、中国、朝鮮など、東アジア中で樹木信仰の対象になっています。また、その形態から女性にみられることも多く、日本に残っている樹木婚姻譚(人間と樹木が異類婚姻する話)の大半は、柳=女性が人間=男性に嫁いでくる展開になっています。『信貴山縁起絵巻』で柳の下に陰石があるのは、ともに衢の神聖性に関わりがあり、また女性を象徴しているという共通点があるからでしょう。