絵に描かれたことは史実の証明になるのでしょうか。

絵巻に関していえば、例えば『伴大納言絵巻』のようなものの場合、それが扱っている応天門の変に関して確たる史料になるかといえば、それは無理でしょう。時代を隔たった300年余り後に、その時代の解釈・感覚で、また史実を明らかにするのとは別の目的をもって描いているわけですから。絵巻が語る史実は、それが作成された時代の社会史、文化史的な範疇のものが主流でしょう。しかし、後白河のサロンにおける作成など当初から政治的な文脈を背負わされたものは、当時の平氏政権などとの関連において、ある種の政治史的史料(政治文化的史料)として価値を持つ場合もあります。