伝統的解釈では「悲嘆」を表すとされたものが、近年、一部にせよ全く正反対の解釈をされるようになったのはなぜなのでしょうか。

文献史料においても、時代によって同じ書物や記録の解釈が180度転換するということはあります(例えば、近年の『日本書紀』批判などを参照)。しかし、絵画の場合はより抽象的・象徴的なので、解釈に委ねられる幅が大きく、そのため文献史料以上に大きく位置づけが変動することになるわけです。それゆえ、絵巻の隅々まで読み込んで細かい表現を確認し、その絵巻全体のなかで位置付けたり、他の作例との比較検討を行いながら、絵巻の持つコードを詳細に復原してゆく作業が不可欠となります。