上巻の清和天皇と良房の面談シーンで、天皇が顔も髷も露わな姿で、しかも無精鬚などを生やして描かれていました。後白河院の「天皇を超える権力」を示したものとの説明を受けましたが、直接の先祖をそのように貶して描いてよいのか、と少々腑に落ちない気がしました。

清和天皇の直接の血筋は息子の陽成天皇をもって絶え、皇嗣は叔父の光孝天皇へ移ってしまいます。その流れが後白河院まで行き着くわけですので、彼にとって清和は直接的な先祖ではないのです。歴代天皇が意識した「祖先」とは、皇統上「画期」をなす人物と、血縁的に近い父祖たちに限定されてゆきますので、後白河にとって清和はそれほど大切な人物ではなかったのではないでしょうか。