教職をとっているので、学界と教育の現場におけるギャップに考えさせられました。教科書の叙述が「科学的」という点について、もう少し詳しく知りたいです。作為的と同じ意味でしょうか。

教科書の記述には主に次のような特徴があります。
1)概ね推論的ではなく断定的である。
2)「○○は××のように云っている」「私は○○と考える」のように、叙述に主体が設定されていない。
3)無記名である。
このようなスタイルによって、教科書の記載は確定された事実であり、また個人の見解によらず普遍的・客観的な価値を持っていること、すなわち科学的な体裁が標榜されているわけです。しかし実際のところ、記載内容はいずれ更新される可能性もある仮説に過ぎず、提唱者もきちんといます。学界の認識と数十年離れた記事が掲載されていることもあります。つまり教科書の科学性は、仮説性や主観性を隠蔽することによって成り立っているわけで、それは偏に国家的アイデンティティーの核となる「事実」を揺るぎないものとするためなのです。