女性を豊かさの象徴と捉えるのは分かるが、殺害が豊饒性に繋がるという発想がなかなか理解できない。現代人と古代人の思考の仕方の違いなのだろうか?

アニミズム世界では、生物の本体は精霊であり、その肉や毛皮は人類文化でいう衣服に過ぎないものとされます。つまり、生き物を殺して肉や毛皮を奪っても、そのやり方が祭祀を伴い伝統に準拠していれば、精霊は故郷へ送り返され〈生命〉は失われません。精霊が戻るその故郷は、あらゆる生命の息づく死と再生のるつぼであり、人間も動物も最終的には同じ場所へ帰ると考えられていたようです。殺された女神の死体に豊かな穀物が実るのも、実際に生物遺体が植物や微生物の温床となる経験的事実とともに、アニミズム的な他界観が前提となっているものと思われます。