ハート形土偶が気になりました。仮面を被った姿か顔そのものをディフォルメしたものとのことですが、頭の真ん中がへこんでいるのは何か意味があるのでしょうか。あるいは、シンボルとしてのハートを表現する意図があったのでしょうか。

難しいですね。とにかく解釈に用いるための材料が少ないので、妥当な見解を導き出すのは相当に困難です。学界においても「こうした可能性がある」程度で、定まった解釈はないでしょう。個人的には、後に勾玉となってゆく胎児のような形は縄文の遺物にもみられますので、心臓を直接象った神像があってもおかしくないのではないかと考えます。心臓の臓器としての機能はともかく、それを生命の象徴としうるような経験的事実は、死を境界としたその活動/停止によって明確に知られていたでしょう。人間のそれでなくとも、狩猟採集社会にあっては、動物のそれを確認する機会は頻繁にあったはずです。よって、女性=母と同様、生命のシンボルとしての心臓を表現したものだと考えるのが、最も妥当ではないでしょうか。