赤色顔料は、酸化鉄系のベンガラ(いわゆる朱。弁柄。インドのベンガル地方の原産なのでこう呼称されるという)、硫化水銀系の辰砂(いわゆる丹。中国の辰州原産)に二分されますが、いずれも、石器時代より破邪の顔料として用いられ、墳墓などには濃厚な施朱がみられます。古墳時代には、石室内部をすべて赤色顔料で塗装した装飾古墳も出現します。講義では、神社の鳥居、寺院の欄干、地蔵の前掛けなどを挙げました。龍水素系の辰沙は、中国で神仙思想と結びつき、不老不死の妙薬とも信じられていました。赤は太陽の色、血の色であり、やはり生命力の象徴とみなされたのでしょう。