半人半神、半人半獣といった想像力は、日本にはない気がします。なぜでしょうか? / どうして人間は、神を表すときに、人や生物を組み合わせることが多いのでしょう。

いわゆる「グロテスク」表象ですね。確かに明確な形では出てこず、出てきても中国古典の引用(『山海経』)の場合が多いと思います。日本列島の文化は、どちらかというと動物になりきる、植物になりきるという変身の方が一般的でしょう。これは、中国をはじめとする東アジアのトーテム信仰が起源と思われます。毛皮を着脱することによって、動物が人になる、人が動物になるといった神話は世界中にみられます。半人半獣も、本来はその展開した一形態でしょう。多くのアニミズム信仰では、動植物の本体である精霊は人間と同じ姿をしていると捉えますが(アニミズム的ヒト中心主義とでもいいましょうか)、そうした意味では、半人半獣を生み出さない日本文化は、やはりプリミティヴなのかも知れません。中国や朝鮮に比べて儒教後発国である日本が、しかし同二国に比して『孝経』に基づく身体の損壊禁忌を強く遵守しているようにみえるのも、儒教が原因ではなくアニミズムが原因だと考えると面白いと思います。