占いは、神話や言い伝えのようなものを意識しながら成立していると思いますが、間違っていますか?

「意識する」というと非常に広い意味になってしまいますが、確かに何らかの宗教的・神話的根拠は存在しますね。亀卜に関しては、これを裏付けるような古代神話はみつかっていないのですが、講義でも時折顔を出す『史記』亀策列伝のなかに、宋国の元王の故事がみえます。これは、元王が江神の使者である神亀を捕らえたものの、その処遇に困って博士衛平との問答し、命乞いをする亀を殺害して亀卜に用い、繁栄を得たという物語です。人間の情愛の道理と、亀の精霊自身の考えを超えて、亀卜の正当性が成り立つという興味深い展開になっています。宋は、春秋・戦国期に唯一存在した殷王の子孫を名乗る国なので、このような伝承が誕生したのかも知れません。日本の亀卜文化のなかにも、なぜ亀卜が鹿卜より優れているかを説明した神話が、卜部の伝承をまとめた『新撰亀相記』に残っています。