古代日本では、海に対する認識はどのようなものだったのでしょうか。

山や川と同様、海に対しても神聖性を覚えていました。とくに海上他界、海中他界の観念は発展して、中世以降にまで受け継がれてゆきます。装飾古墳の壁画をみても、海の彼方に神霊の原郷ともいうべき他界があるとの認識をみてとれますし、『古事記』や『日本書紀』にも、海の彼方から寄り来る来訪神的存在を認めることができます。天と海を同様にアマと訓むことから、両者に共通の意識を認める見解もありますし、山の神をヤマツミ(山+「〜の」を意味する助詞+神霊を意味する名詞)と呼ぶのと同じく海の神をワダツミと呼ぶことからしても、海は、景観としては空と同じく大なるもので、生活領域に近接する自然空間としては山と同じく聖なるものとみなされていたのでしょう。