神祇信仰において、大きな岩や樹木を対象にする以外では、どのような神聖化のパターンが認められるでしょうか。

確かに、例えば山や島に対する信仰でも、そのなかに屹立している巨岩を神の依代にみたて(=「磐座」といいます)、奉祀するというパターンが多いですね。樹木に対しても同様です。そのほかによくみられるのは、やはり講義でも扱った湧水や流水でしょうね。湧水は土地のエネルギーの象徴として、流水は禊ぎや祓いに際して重宝されたようで、湧水点や川原における祭儀の痕跡が残っています。私は個人的には、これら水に対する意識には、それらを産出する〈穴〉へのアジア的信仰が作用していると考えていますが、さてどうでしょう(拙稿「ヒトを引き寄せる〈穴〉―東アジアにおける聖地の形式とその構築―」『古代文学』49、2010年)。