史官に政治顧問的な役割があったのは分かりました。現在の政治家についても、発言の内容を考える人と実際に話をする人とは違うと聞いたことがあります。それでも、表に出る君主や政治家は必要なのでしょうか。 / 卜官や史官が卜占をある程度意図的な結果へ導けるとすれば、君主を操って彼らが政治を動かすことも可能だったのでしょうか。

例えば、日本古代の天皇が朝廷において政治を執ることを「聴政」といい、何らかの申請があった際に許可を出すことを、「聴」と書いて「ユルす」と訓みます。これは、群臣たちの様々な意見をよく聞いて、自らが最終的な判断を下すためです。すなわち、政治とはまさに「聴くこと」なんですね。そうした意味では、卜官=史官がブレーンとなって様々なアドバイスをし、それを君主が取捨選択して政務を行うことは、政治のありようとして正しいのです。君主は何が最善の策かを決める判断力、それを宣布する語りの能力、人徳やカリスマ性に長けていることが必要なのでしょう。