占夢の文化は、近代に入ってどのような経過をたどり、現在のような娯楽に落ち着いたのでしょうか。とくに太平洋戦争期のことが知りたいです。
まずやはり大勢においては、近代化の流れのなかで排斥されてゆくことになりますね。しかし大正前後の近代オカルティズムのなかで、大いに見直しが図られることも確かです。夏目漱石や芥川龍之介など、夢を題材とした作家の作品も増えますし、とくに宮澤賢治は、夢でみたイメージを霊界との通信として把握していた節があります。これらは、当時、千里眼事件の福来友吉らによって盛んに紹介されていた、ウィリアム・ジェイムズのサブリミナル学説と結びついています。すなわち、個人の意識下には連続する宇宙意識が存在し、死者の意識はそこへ還元されるため交信も可能なのだとみるわけです。実は、ナチス・ドイツよろしく、ナショナリズムはかかるオカルティズムを内包しながら発展してゆきますので、科学/宗教の境界が大きく動揺している近代は、非常に面白い時代といえますね。