中国をはじめとしたいくつかの国が占いを重視していたことはよく分かったけれど、何故そんなに予言や占いを頼りにしたのでしょうか。

科学の発達した現代を生きる私たちにも、まだまだ分からないこと、判明していないこと、あるいはテクノロジーでは解決できないこともたくさんあります。現在でも占いがなくならず、毎日たくさんのメディアで扱われ、しかもそれを確認する人々が大勢いるのはそのためでしょう。前近代においては、人々を不安にさせる「分からないこと」が現在よりももっと多く、それが場合によっては、個人や家族、国家の将来をも大きく変えてしまう恐れがあった。将来の危険をできる限り回避してよりよい未来を選択しうるよう、占いの知識が蓄えられ、技術が磨かれていったのは当然のことだったでしょう。気候の変化にしても、戦争の勝敗にしても、人間の運命にしても……占いは、それらを予測するための科学の一種だったのです。それが証拠に、講義でお話しした歴史学はもちろん、医学や天文学・暦学、兵法なども、かつては占いの一部を占めており、そこから分離・独立していったものなのです。