聖徳太子に限らず、他にも漢籍に倣った記述というのはあるのでしょうか?

もちろん、『日本書紀』の各所に認められます。例えば、乙巳の変を成し遂げる中大兄皇子中臣鎌足の出会いの場面。飛鳥寺の西の槻の広場で、打毬をしていた中大兄の沓が脱げ落ち、これを鎌足が拾って捧げるという有名なシーンがあります。これは、『史記』や『漢書』に描かれる漢帝国建国の英雄張良と、彼に兵法を伝授する黄石公という仙人との出会いを下敷きにしたものです。鎌足の伝記である『藤氏家伝』大織冠伝には、中大兄が鎌足を、「お前は私にとっての張良だ」と評する場面もみられます。