肉食文化に地域差はなかったのですか。例えば、沖縄や北海道でも肉食はあったのでしょうか。 / 動物の種類によって、食べてよい・わるいが規定されることはなかったのですか。 / 列島の肉食文化が、牛・豚・鳥の定番になったのはいつでしょう。

もちろん地域差はありますが、逆に北海道や沖縄は、稲作イデオロギーの浸透する本州各地域より、肉食文化が前近代から持続的に存在するといえるかもしれません。北海道はアムール川流域の狩猟採集文化に接続しており、アイヌなどはまさに狩猟採集民族ということができます。肉食も普通に行われてきました。沖縄は中国文化との密接性が強く、また仏教文化も浸透していなかったために、牧畜に基づく肉食が長く行われてきたのです。全体的に狩猟採集の系統を引く日本文化においては、動物種による食用/非食用の区別は明確ではありませんでした。神聖視した動物も、逆に神聖であるがゆえに神に捧げられたり、あるいは食べられてきたのです。下でも扱った鹿などが主な事例ですね。しかし仏教では、牛や馬について「牛や馬は、前世で借財を返済できなかった人が、生まれ変わって労役についている姿である」と説教してきたので、人間に近いものとして食べるのを忌む習慣が生じたようです。魚は対照的に人間と遠いものとして、「肉」の範疇に含まれない場合もありました。食用肉が牛・豚・鶏の定番に落ち着くのは、西洋的な牧畜に基づく食文化が定着して以降のことですので、もちろん近現代においてです。