殺生禁断令の手本になった中国では、日本と比べてどのような情況が確認できるのでしょうか。
私たちが一般的に考える中国文化は漢民族の文化ですが、中国には他に、現在55ほどの民族があります。漢文化でさえ、東西南北の地域によって大きな相違がありますので、中国地域全体のことはとても一括してみることはできません。ある地域・民族では稲作農耕を主要な生業にしているかと思うと、別の地域では牧畜、また別の地域では狩猟が生業となっている。そのようなところでは、殺生禁断令が連続して出されても、慣習として継続的に遵守されたり、後世に特徴的なメンタリティーとして残存することは困難でした。よって、庶民の食文化は、日本の前近代のそれより貪欲であると思います。ただし仏教の僧侶たちには、日本の僧侶のように肉食妻帯することなく、多く戒律を遵守して生活しています。