動物を殺すことのみを罪業と感じ、植物を殺すことには平気な人間のあり方には問題を感じる。人間と近しいものだけにそうした意識があるのだろうか?
草木の伐採を罪業視する見方も、アジア地域には存在します。割合に普遍的にみられるのは、「伐採抵抗伝承」というタイプの伝説で、人間が樹木を伐採しようとすると、樹木がそれに対し何らかの形で抵抗するという内容のものです。伐り口から血を流す、伐り口が塞がるなどが最もよくみられるパターンで、他には伐ろうとした人間が病気になる、死ぬなどの例もあります。こうした物語が発生したり、語り続けられたりするのは、人間が樹木伐採に対し罪悪感を持っているためでしょう。また日本仏教には、インドや中国ではそれほど展開しなかった、草木成仏論があります。草木も人間と同じように、発心・修行して悟りを開くという考え方で、これも草木の生命を重視する思想のひとつですね。