食事の前にする「いただきます」という言葉は、殺生功徳論と関係があるのでしょうか。

一般常識的には、食物の生産者、流通に関与した人々、それを買得し料理してくれた両親に感謝をする、という人間社会のみを対象にした言葉でしょう。しかし宗教的には、食物の本質である生命そのものへ感謝をするという意味が込められています。「いただきます」の際には手を合わせますが、これはもともと神仏を礼拝するときの所作です。中世以降、日本の自然はそのまま神仏であるとする考え方が唱えられ、学問や芸能を通じて広く社会に広まりました。よってそうした意味では、「いただきます」も神仏、ひいてはそれに表象された自然の生命へ向けられてきたといえるでしょう。