平安時代に外からもたらされて定着した猫も、「外来種」として扱われるのかと驚きました。それでは、「固有種」とは何なのでしょうか。

根本的な問いで重要ですね。「民族」という概念と同様に、「固有種」という概念も、実は非常に恣意的なものです。「民族」も、肌の色や身体的な特徴などによって自然科学的な概念に思われていますが、アフリカにおける人類の誕生から各地域への派生、交配といった事情を考えると、それが非常に文化的なものであることがみえてきます。日本列島に暮らす人々も「日本民族」などといういわれ方をしますが、北方や南方から様々に流入してきた人々、朝鮮半島や中国から移住してきた人々の交渉の結果として現在の我々があるわけで、「民族」概念の虚構性は明らかです。さらに、今後もより多様な交渉が行われ、列島に暮らす人々の形質が変化してゆくことを考えると、「民族」がある特定の時間を絶対化し、その時点での形質を固定化して形容していることが分かります。「固有種」もそれと同様の名付けにすぎません。