『源氏物語』では、猫が妊娠の象徴として描かれている部分があるが、それはどういう理由からだろうか。

定説的には、当時、夢に獣をみるのは妊娠の兆だとする考え方があったのではないかとされています。鼠や兎など生殖能力が高い動物は、死と再生のシンボルとみなされるなど、性や出産と関連づけられることが多々あります。猫もサカリの際の行動が特徴をもって語られ、また多産でもある生き物で、ちょうど『源氏物語』の当該箇所でも猫の子供たちの話題が出てきます。恐らくそうした幾つかのモチーフの複合によって、猫の夢が妊娠を暗示するような言説が構成されているのでしょう。