平安時代の猫のイメージは、例えば日光の眠り猫にも繋がっているのだろうか。また、福を招く招き猫の発想はどこから生じたのだろうか。
眠り猫は、眠ったふりをして鼠を捕まえる様子から辟邪の効力があるといわれたり、猫が眠っていられる太平の治世を象徴しているといわれたりしますが、いずれも、平安時代の猫観からそう離れてはいないと思います。招き猫については、豪徳寺などにその由来が伝わっていますが、そもそも両義的存在とは凶とともに吉をもたらすもの。招き猫が確立する以前にも、猫による幸福の将来というモチーフは存在したものと思います。なお、唐(860年成立)の奇談集『酉陽雑俎』続集八には、「猫面を新ひて耳を過ぐれば、すなはち客至る」との文があります。猫が顔を洗う仕草を人招きと捉える見方はヨーロッパにも認められ、このあたりが招き猫のルーツではないかと推測されています。