「黒猫を忌む」という考え方は、古くからあったものなのでしょうか。

以前に紹介した宇多天皇の日記において、彼が可愛がってやまなかったのは黒猫でした。よって、日本にはもともと黒猫を忌む発想はなかったものと思います。恐らくは、中世ヨーロッパにおいて、猫が悪魔や魔女に属するものとカテゴライズされたとき、それらを象徴する黒色の猫が忌避されるようになったのでしょう。しかし、日本の諸史料をみてみますと、宇多天皇以降は、黒猫の記載をあまりみません。絵画に描かれたものも、前近代においては概ね白猫、斑猫、灰色、三毛猫です。これは、黒猫が忌まれた結果だとみることも可能でしょう。確かに、闇にまぎれてらんらんと目を光らせている姿は、あまり気味のいいものではないかもしれませんね。