狐憑きなどの正体とは、一体何なのでしょうか。

狐憑きについては、2つの側面から考える必要があります。1つは、「狐憑き」とされる当事者自体に異常な言動が確認される場合。その少なくとも一部は、何らかの精神病の一種と考えていいでしょう。現在でも精神科には、「脳内にチップが埋め込まれ国家に操られている」「UFOに操られている」といった類の相談があるようです。かつてはその説明形式として、「狐」の蓋然性が高かったのでしょう。そしてもう1つは、他者がある家の系列を「狐憑き」と差別する場合です。これは、平準化を重視する村落共同体に突如富豪などが出現した際(貨幣経済の浸透などによって、そうした格差が生じ始めた)、共同体が集団的に「彼らは狐憑きであって、狐を使って富を集めているのだ」といった批判をなし、平準化の欲望を達成しようとするものと考えられています。「狐憑き」だけでなく、「犬神憑き」や「六部殺し」などの表象もあります。