カエルなどのように変態する生き物が神聖視されたとすれば、蝶など完全変態する生き物も同様に信仰されたのでしょうか?

中国の道教では、蝉が仙人の象徴と認識されています。俗人の抜け殻を捨て、神人として生まれ直すという意味ですね。アジアでは、そうした観点から昆虫を特別視する要素もみられます。しかし、日本列島に限定していうと、絹生産において珍重される蚕以外には、虫に対する信仰はあまり強くありません。蝶についても、一部には人間の魂の変化だとする見方もありますが、いつそうした認識が成立したかは分かっていません。ちなみに、中国諸子百家の『荘子』には、「いまここで考えている人間としての自分と、覚めた夢のなかで待っていた蝶としての自分と、どちらが現実でどちらが夢なのか」という「胡蝶の夢」なる一節があります。恐らく、起源はこのあたりに求められるのでしょう。