小説や映画、アニメなどでは、よく物語の冒頭に犬の遠吠えが響くシーンがあります。同じように猫が登場する場面もよくみまるが、何か共通の象徴性などがあるのでしょうか。

確かに、そういうシーンは目にしますね。まず犬の場合、最後の授業でも絵巻をみていただきながらちょっとだけ触れましたが、犬が何かを察知して吠え騒ぐ場面が、緊張や事件の前触れとして描かれることがあります。遠吠えは夜半、静けさの象徴でしょうが、犬が騒ぐことは、人間には分からない危険が迫っていることの暗示であり、平安時代から続く表現方法といえるでしょう。猫の場合も、闇の中で光る目がチラッとこちらをみて消える、などの描き方をよくされます。あれも人間の気づかない気配の表現、何かの訪れる前触れの動きとみてよいでしょう。いずれも、犬や猫の日常的動作に対する記憶のなかから生まれ、ある程度無意識の領域で共有されているイメージだと思われます。