なぜ異なる地域なのに、神話が似ているのでしょうか? それぞれの地域で交流があったのですか?

説明の仕方としては、大きく分けて伝播論と多元的発生論があります。前者は、ひとつの考え方が何らかのネットワークにより伝達したとするもの、後者は、類似の環境のもとでは類似の物語が発生しやすいと考えるものです。実際は、これらを組み合わせることによって説明できる場合が多いですね。例えば、インドに起源する神話形式が日本とヨーロッパに伝播してゆく場合、隣接する地域で類似の物語が存在すると、それと半ば一体化しながら伝言ゲーム的に伝わってゆきます。神話は何らかの自然現象に対する説明形式であることが多いので、同じ自然環境、自然現象を共有している地域であれば、その説明自体も共有される場合が少なくないのです。もちろん、伝言の結果まるで異なるものへ変容してしまうこともあるわけですが、伝播してきたものがもともと現地にあった物語を改変しながら、だんだんと遠くへもたらされてゆくこともあります。そうした場合、ギリシャと日本で類似の神話が語られることになる、というケースも生じるわけです。