神武天皇は実在したのでしょうか。 / 神武天皇など、神話とされる時代の天皇は7〜8世紀頃、天武・持統あたりに作られたといわれていますが、どう思いますか?

日本書紀』『古事記』に載る系譜上の天皇=大王のうち、実在の間違いないのは雄略天皇継体天皇前後からでしょう。雄略が倭王武、ワカタケル大王とすれば、その名前は複数の同時代史料に確認できます。しかし継体天皇に至るまでの間は、系譜的に捏造の行われている形跡があり、「雄略以降は実在」とはいいがたい情況です。各々の事跡や当時の気候・事件等々についても、漢籍を援用したまったくの虚構が書かれていたりするので、注意して読み進ばねばなりません。雄略以前は、歴史を文字によって記録してゆく作業も実施されていたとはいいがたく、多くは語り部によって継承されていたと思われます。長く伝えられた伝承なり記録なりがあるとすれば、そのような「物語り」であったはずで、それらが『古事記』『日本書紀』の記述の原型であった可能性もあります(「帝紀」「旧辞」)。しかし、いま我々がみるような形に構築された神武以降の「天皇」は、やはり7〜8世紀の律令国家建設に併せ、特定の編纂方針のもとに「創られた」としてよいでしょう。