3月は桃の節句があり、桃は邪を祓うといわれていますが、これは神仙の力を持つことと関わりがあるのでしょうか。 / 中国では庭先に李を植えるといいますが、これも神仙思想との関わりからですか。 / 仏教でも桃の花のモチーフがよくみられますが、やはり桃源郷の思想でしょうか。

季節に適合的な収穫物(いわゆる旬のもの)は、生命エネルギーが漲っている状態ですので、辟邪の能力を持つと考えられました。3月の節句は、桃の力を借りることで、子供の力強い成長を祈願する意味があるわけです。ところで、生殖器象徴でもある桃は、生命が生まれ出づるところゆえに強い生命エネルギーを持ち、不老長寿の効能があるともみなされてきました。それは果実だけでなく、樹木本体にも及んでいました。例えば『春秋左氏伝』や『礼記』、戦国秦の出土文字史料「睡虎地秦簡」には、桃の木で弓を作り荊で矢を作って射るなどの邪鬼祓除法が記されており、中国の戦国時代に遡る習俗であることが知られています。庭先に李を植えるのも、邪なものから家を守護するためでしょうね。
なお、仏像や仏画に採り入れられている花は桃ではなく、蓮ですね。蓮は泥のなかから美しい花を咲かせるので、煩悩の淀みを転じて覚りを開くという仏教の象徴として用いられるわけです。