祭祀の形式が移り変わるとともに、奉献品を置く場所が変わっていったのはなぜですか。

正確には、祭祀を行う場所、奉献品の種類やその設置場所が変化してきたことで、祭祀の形式が変わったと捉えられるのです。祭祀を行う場所の変化がなぜ起きたのかは、充分な証拠をもって説明することはできませんが、例えば神観念の変化が影響しているのだとみることができます。沖ノ島祭祀の巨岩祭祀段階では、神は巨石に宿るというより、天からその上に降り立つものと考えられていたとみられます。神は天上にあり、祭祀の折にだけ求めに応じて岩上に現れ、祈願と奉献品を受けて去ってゆく。それが岩陰祭祀の段階では、神が巨石自体に宿るとみなされるようになったのでしょう。神が巨石にある限りは、その上に載って祭祀を行うことはできない。神社一般においても、かつて必要な時にのみ降臨していた神がその場に常住するようになったことから、常設の社殿が造営されるようになってゆくのです。沖ノ島の巨岩にも、神の降臨の場から常住の住処へといった、性格づけの変化が起きた可能性があります。露天祭祀になると巨岩自体の神秘化が進み、祭祀の場も、岩の周囲からさらに距離を置くようになったと考えられるかも知れません。