幕府政治のルーツが府官制にあるとのことですが、頼朝はそれを知っていたのでしょうか。

きちんと実証したわけではありませんが、源頼朝が幕府を開く際に、大江・三善という文人官僚を招いている点が重要です。とくに大江広元は、紀伝道(当時の歴史学)の大家である大江維光名跡を受け継いでいました。また、広元の曾祖父匡房は、院政期随一の学者のひとりですが、彼は吉備真備を顕彰してその兵法を受け継ぎ、源義家に伝授したとされています。もちろん伝承ですが、大江氏が院政期に兵法をもって自氏を宣伝し始めたことは確かです。頼朝が広元を呼び寄せたのは、単に幕府運営の事務を任せるためではなく、広範囲にわたるブレーンとしての信頼があったものと考えられます。