古代中国において、史官は権力者の強制に抵抗して直書を行ったとのことですが、権力者の側はどのように感じ、どう行動したのでしょうか。

もちろん、権力者の側はその正当性を確立するため、史官側の直書に対し厳罰をもって応じることも少なくありませんでした。『春秋左氏伝』には史官=卜官による諫言が多く載せられていますが、それに従わなかった君主は多く滅びに至っています。こうした記載が残存しているのも、直書の一種であるということができるでしょう。よくいわれる、武帝が自らの治世に批判的であった『史記』から武帝紀を削除させたという話は、史料的根拠が薄弱ですが、権力者と史官がいかなる関係を結んできたか、それがどのように歴史に記されてきたのかを髣髴とさせます。