中国や韓国では常に起こりえた易姓革命は、日本では本当に起きなかったのでしょうか。
起こりうる情況は、何度かありました。室町幕府の足利義満の時期、安土桃山時代の織田信長の時期、そして江戸幕府の時期ですね。とくに江戸幕府は、将軍自体が神格化するような宗教的権威を整えていったので、開国の混乱期を乗り越えれば天皇制は終わっていたかも分かりません。天皇制が持続したのは、ひとつには政治的に大きな利用価値があったからですね。何者かが政治的実権を掌握して大義名分を掲げようとするとき、例えば易姓革命が息づいている中国では、天命を語ることで正当化を図ろうとします。しかしそうした伝統のない日本では、例えば天皇制を否定してしまうと、自ら新たな大義名分を創り出さなければなりません。それよりも、実権のない正当性の根拠として天皇を保持し続け、それを政治的に利用して大義名分を得る方が簡単で、混乱も少なかったのです。