群臣層の間で、職掌を奪い合うようなことはなかったのでしょうか。

少し時代が降りますが、祭祀を司る中臣と忌部の間には、神祇官職掌をめぐって争いが起きています。鎌足以降に突出した中臣氏が、神祇祭祀の要職を独占するようになったためです。氏族制の頃には、それぞれの氏族が王権奉仕の歴史のなかで培ってきた職掌を持ち、それは他の氏族には代替できない性格のものでした。よって職掌をめぐる闘争は表面化しませんでしたが、律令国家が成立して官僚制が確立すると、従来世襲的にひとつの職掌を担っていた氏族が、それを達成できない(希望の職に任官されない)場合が出てきます。そうなると類似の役割を持つ氏族の間で対立が生じたり、あるいは自らの「家職」を転換させる者も出てくるようになるのです。