社会学の勉強をしているときに、機能理論や紛争理論などを、自分が研究していること、明らかにしたいことに応じて選んでいくというような話を聞いたのですが、歴史学ではそのような立場は可能なのでしょうか。

例えばアメリカの歴史学研究は、それに近い構造を持っていますね。例えばデリダフーコーブルデュー、ギアーツなどさまざまな思想家の理論・方法を学びながら、対象と目的に応じて使い分けてゆく。確かに、いろいろな理論を当てはめて考えてみることで、対象の多様な側面が浮かび上がるという意義はあります。しかし、対象と自分との関係のなかでその理論・方法は妥当性を持つのか、複数の理論を用いると必然的にそれらが相互に抵触することになるが、それについては見て見ぬふりをするのかなど、幾つかの問題があります。たくさんの理論、方法を学ぶことには賛成ですが、それを整合的に使いこなす立場をしっかりと構築していなければ、正当な議論にはならないだろうと思います。