21年も生きて今さらですが、人が「倫理」という言葉を何を指して(何を想像しながら)使っているのかよく分からず、違和感があります。北條先生はどのような意図でお使いなのですか?

この講義では、他者との関係を、いかに暴力的ではない形で取り結ぶか、取り結べるのか、という問いが中心に置かれています。それを実現するのが倫理であり、倫理について考えるということでしょう。歴史学の営為も、そのうえに初めて成り立つべきものと考えます。なお、暴力が関係によって成り立つものとすれば、こちらがいかに意識をしようが、他者がどう考えるかによって、何でもないように思える言動でも、「暴力」と認識されてしまうことはありうる。つまり、人間社会において暴力を根絶することは不可能です。ならば、誤解を極力生じさせない関係、生じてしまっても解消しうる関係を構築してゆくことが急務でしょう。講義を通じて、そのための方法を模索しているところです。