死者論の死者の捉え方には、様々な宗教の死者の考え方も関わってくると思われる。キリスト教にとっては死者の魂は救うべきものですが、仏教では鎮魂という思想なのですか?

授業でもお話ししましたが、鎮魂はむしろ、日本列島の文脈においては神祇信仰的なものの考え方でしょう。アジア全体でも、広く在来宗教のなかに認めることができます。魂には荒ぶる面と穏やかな面があり、祭祀によってそれをコントロールすることが求められる。非業の死者の魂は、怒りや憎しみ、無念のために凶暴な様相を呈しているので、そのままにしておくと生者の世界に害をなす。そこで、様々な供物を捧げてその激情を和らげ、安定させるのが魂鎮め、すなわち鎮魂ということになります。