『日本書紀』の崇仏論争は史実ではないとのお話ですが、仏教の思想は、それだけ当時の人々に受け入れられやすい教えだったのでしょうか。

確かに、「仏教信仰」が大きな混乱もなく受容されていった、ということはあります。しかしそれが、どの程度「仏教思想」を理解したものだったのか考えると、大変疑問でもあるのです。仏教はインドで生まれ、西域を通って中国、朝鮮半島、日本へと伝来しますが、すべてが同じ宗教とはいいがたいほど多様化しています。すなわち、それだけ各地域の需要に応え、受け容れられやすい形へ変容しているのです。仏教が世界宗教として大規模に伝播したのは、どのようにも姿を変化させてゆく柔軟性を持っていたためだといえるかもしれません。